娘の発達凸凹 – オオカミになるとは?[前編]
2018年4月10日
カミングアウトストーリー
マヲさんの持っているマイノリティ要素を教えてください。
小学校3年生の娘が、発達障害なこと。診断を受けたわけではないので、完全に発達障害とは言えないんですけどね。症状としては、同世代とのコミュニケーションや気持ちの切り替えが上手じゃなかったり、落ち込むとなかなか抜けられなかったり、ちょっとしたことでめそめそしたり大声を出してしまうんです。
あとは、ファンタジーの世界に入っちゃうこと。独り言が多かったりするし、ちょっと興味がそれたりしたら、自分の世界に入ってしまって、周りが見えなくなっちゃうんです。
多動はなくてその場にはいられるんですけど、話を聞いていなかったりして、だからそのたびに大人が声をかけて注目を促さないとならない、というのも特徴かな。
最初に気づいたのは何年くらい前ですか?
保育園の年少の頃ですかね。こだわりが強くて「こっちから帰りたーい!」って泣かれたり、水槽の前を通ったら1回立ち止まらないと喚き散らしたりして、本当に保育園の帰り道が苦痛でした。一方で「これは寂しいアピールなのかな」なんて思ったりもしていて「構ってあげなきゃな」とも考えていたんです。
でもある時、周りから「癇癪起こしやすいよね」と言われたことで「病気なのかな」と何となく思って、軽い気持ちで検索したら『発達障害』っていうワードが出てきて、読み始めると当てはまる項目が多すぎたので、夜通し調べ尽くしたんです。
調べ尽くしたことで、どのような変化があったのでしょうか?
どんどん私が落ち込んでしまったんですが、もともと隠せないタイプだから、いてもたってもいられなくなって旦那や親に打ち明けたら、「調べすぎだよ」って。「ネットの情報だから悪いことも出てくるし、気にしすぎだよ」と言われたんです。当てはまらない項目ももちろん何個かあるし、例えばこだわりが強いことも「おまえだってそうじゃん」って旦那には言われたんですけど、私はそうは思えてなくて。
子どもに対して「大きくなったら…」って期待していたことができなくなるのかな、と思うとショックで、過呼吸を起こしたり、涙が止まらなくなったりしました。
ご自身に影響が出てしまったのですね。保育園の先生には相談されたのですか?
言わなきゃと思っていたものの、先生と上手くいってなくて…。預けたのは1歳2ヶ月頃だったんですが、うちの子だけつかまり立ちもハイハイもまだで、そしたら先生に「脱臼してるんじゃない?」と言われたんです。それで外科に連れて行ったらお医者さんに「保育園でそんなこと言われたの?ぜんぜん脱臼なんかしてないよ」と言われたことで、ちょっと保育園に不信感が湧いてしまって。
それは余計に言いにくいですね…。
その頃、仕事の影響でお迎えが遅かったりして、先生と話す時間がなかなか取れなかったんです。連絡帳の使い方もよく分かってなくて、上手く先生とコミュニケーションが取れない日々が続いたら、先生の当たりが強くなってきて「ちゃんとやってますか?」って。
ある日、私が熱出して早く帰ってきた日に、たまたま休みの先生に見つかって「お母さん、今どこいるの?駅にいたの見たよ」って電話がかかってきたんです。脅迫ですよね。「そのまま迎えにきてもらわなきゃ困るのよ」って言われたから「すごく熱が出ていて、休んでから迎えに行こうと思っていたんです」と説明したのに「そうじゃない」と一点張りで、仕方なくタクシーで迎えに行きました。そういうこともあって、1年に1回の面談は、旦那にお願いした日もあったくらい苦痛でした。
それは大変でしたね。では、そのまま相談はせず?
いえ、少ししてから『田中ビネー』の簡単な検査結果を持って行きました。
私が娘の様子に気づいてから、市役所に相談して簡単な検査をしてもらったところ「集団児検診に心理の先生が来るから、その日に予約を取ってみたらどうか」と提案されたので、予約して面談してもらったんです。かなり簡易的な結果しか出さない先生で「今の状態だと、1歳下の子たちとだったら上手くいく程度の発達しかしていない」「まだ3〜4歳なので来年診せてね」という感じでしたが、その結果を保育園へ持って行って打ち明けました、上手くいっていなかった担任の先生に。
先生の反応はいかがでしたか?
私が「発達障害かもしれないけど、将来的に上手くいくようフォローしていきたい」と言ったら、「すごく分かるわ」ってめちゃめちゃ泣いてくれました。先生も心配してくれていたんだなって、その時やっと思えた一方で「実はそうじゃないかなと思っていた」と先生に言われたことでカチンときて。私としても、まだ飲み込めてない私自身の気持ちと、打ち明けなきゃいけないという思いに葛藤していた状況だったのに「分かっていたよ」って、上からの感じでこられたから。
ご自身の葛藤に対して、寄り添うような関わりではなかったんですね。
娘をフォローしていこうという気持ちと、でも違ってほしいという葛藤もありました。「将来的には上手くいくよね」と、まだちょっと楽観視していたかな。「支援していけば、いつかはパズルのピースがハマるんじゃないかな」って、そんな感じで頑張ろうと思っていた時に、やっぱり周りもそう思っていたのかってなって。でも結果として保育園はガラリと変わって、娘に対しても先生の対応が優しくなりました。
保育園の変化によって、ご自身の変化はありましたか?
なるべく早く迎えに行くよう心がけるようになりましたし、面談も苦じゃなくなって、むしろこっちから「来期に向けてお願いします」って言えたりして、先生と仲良くなれました。だから、この方向性が間違っていなかったんだなと、自分でも実感できています。
その後、娘さんへの対応で変化したことはありますか?
どうしたら娘のためになるかを考えたときに、まず同じ年齢の定型発達の子たちが何をやれているのかを知らなければと思って、通信教育を始めました。ひらがなやカタカナは順調に覚えたんですが、間違い探しや線引きで引っかかって、「もしかしてこういうところが苦手なのかな」と見えてきたんです。それで個別に教えてくれるところはないかなと考えて、またネットで『発達障害』『治す』『教室』とかを検索したら、とある発達支援教室がヒットして、『発達障害の疑いのある子に向けた幼児教室です』と書かれていたので、とりあえず見学に行こうと考えました。
発達支援教室、娘さんの反応はいかがでしたか?
「パパとママも一緒だから」と伝えたら、割とすんなり付いてきました。教室の先生は若くて優しそうな感じでしたし、集中を持続させるために「できたご褒美だよ、ゲームやろうか」と言って、合間に遊びを入れてくれたりもしていました。娘にはしゃぼん玉がヒットして、それで「また行きたい」となってくれたんです。
では、旦那さんに何か変化はあったのでしょうか。
「心理検査受けてきたよ」「1歳遅れだったよ」とか、通信教育で線引きが上手じゃないとか間違い探しができないとか、そういう結果をちょっとずつ積み重ねて説明していくことで、旦那も「そうなのかね」と興味を持ってくれました。
たまたま旦那の営業先が教育機関で先生の繋がりが多いので、特別支援に携わる先生に娘の話をするようになって、すごい情報を持ってきてくれるようになったんです。しかも営業先の先生が私のこと褒めてくれて「ご家庭の環境はすごくいいと思いますよ」とも言ってもらえて、そんな風に外から認めてもらえたことで私も自信を貰えました。ある日、その先生が本をくれたんです。「娘さんの保育園の先生とのコミュニケーションで使ってください」って。旦那のおかげで、色々と繋がることができました。
娘さんのことで葛藤を抱えながらも、一歩ずつ進んできたマヲさん。インタビューでは、ある一定の乗り越えた気持ちから生まれる笑顔を見せながらも、娘さんに対して愛のある強い意思を感じました。後編では発達支援教室に通い始めてからの変化や、小学校への入学前後のお話しへと続きます。
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