娘の発達凸凹 – オオカミになるとは?[後編]
2018年4月18日
カミングアウトストーリー
娘さんが発達支援教室に通い始めたことで、ご自身に変化はありましたか?
ひとまずホッとしました。あとは同じ時期、相談先が増えていったことも良かったです。市役所で紹介してもらった心理の先生以外にも、住んでいる市内で療育をやっている施設が月1~2回、診断を受けていないけど発達に心配がある子のお母さん向けに座談会をやっていたので、同じ悩みを抱えているお母さんたちと話せる時間ができたんです。
お母さんたちが話している間、子どもは先生が見ている中で安心して、ルールのある遊びとかを教えてもらえたりするという時間を持てるようになったことで、私も前向きに変われたというのはあったかなと思います。先輩お母さんに「何歳のときにこうしたよ」とか「いっぱいハグすればいいよ」とか、簡単で今すぐ使えるアドバイスをもらったりもして、「うちだけじゃないんだ」って感じられたのは安心になりました。
安心できる環境が、少しずつ増えていったんですね。
年長の時には、市から発達支援コーディネーターを付けてもらえました。その後、教室の先生に保育園まで来てもらって、コーディネーターさんと保育園担任と私の4者面談で、今後の支援を具体的に考えたりもしました。そんな中、私たちに2人目が生まれたことで、実家に近い都内へ出たいと思うようになり、それをコーディネーターさんへ伝えたら「都内の方が支援体制が整っているから大賛成」って応援されました。
では、小学校入学までに対応が必要だったことはありましたか?
通う予定の小学校で、就学時検診という自己紹介や名前を書いたり、発達検査の簡易版みたいなテストを受けて、娘は問題なく通過したんですね。入学する前に、通級(※1)にするか通常級にするかを決められるんですけど、最終決定権は親にあるので、教育委員会には「私としては通常級でいってみたい」と伝えたんです。
で、「それで大丈夫です」と言われたので、その結果を持って小学校の副校長に面談のアポを取って、コーディネーターさんに作ってもらった特別支援計画を渡して、「今までこんなことをやっていました。発達支援教室にも通っていましたし、通常級でいくことを考えています」と説明しました。そしたら「学校側も入ってみないと分からないところもあるので、とりあえず承りました」と、その場では留まっちゃったんですけど、それでも「こういう子どもです」っていうのは伝えておいたんです。それで最終的には、通常級で入学することができました。
ここまで大変な道のりだったと思いますが、小学校入学は感慨深かったですか?
そうですね、目標のひとつだったので。でも発達支援教室に通っていたものの、基本スペックは変わってなかったから心配の残る入学ではありましたし、入学したらやっぱり授業中に教室を立ち歩いたり、先生のちょっとした注意で帰ってしまうなどはありましたね。カッなると引っ掻いたり噛み付いたりして、他のお母さんに謝ることもありました。
とはいえ、引っ越しという環境の変化もあったし、早く慣れてくれるのが一番だと思っていて、1年くらい経った頃には飛び出したり授業中に立ち歩くこともなくなりましたし、「落ち着きましたね」と先生からも言われるようになりました。学校の先生には、他のお子さんより面談数を増やしてもらったり、「運動会とかイレギュラーのイベントのある時は、注意してください」みたいな感じで伝えています。
今はどのようなことが大変なのでしょうか。
対人関係と姿勢保持ですかね。同世代とは上手にコミュニケーションできていないので、クラスでお世話係の友だちを付けてもらっていて、娘のテンションが上がった時には「今は座る時だよ」って肩をポンと合図してもらったりしています。運動会とかの行事は特にフォローが必要なんですが、入退場の動作も遅いから、背中を押してもらったり手を繋いでもらったりしています。体育座りのような、ずーっと同じ姿勢でいることも苦手ですね。
WISC-Ⅳ(※2)の結果では言語性が高いと出ていて、つまり言葉の理解はできるから、言えば入るんです。だけど長い説明は集中力が続かないので、個別に何度か細かく切って伝えてもらわないと分からないことがあります。
引っ越してからの相談先は、どのようなところを確保したのですか?
今はスクールカウンセラーと担任の先生と、区の教育相談室との連携を主に取っていて、それ以外に区役所の特別支援コーディネーターさんを繋げてもらっています。相談窓口だけは、いっぱい持っておこうと思って。コーディネーターさんは18歳まで長期的に相談できるし、区が委託している、発達障害の療育専門の民間業者を紹介していただけたので、そこのグループ療育に3年生の2学期から行きつつ、同時に通級も活用し始めました。
通級の活用も始めたんですね。
勉強も3年生から難しくなっているから、学校内でフォローをしてもらうにも通常級だけでは難しくなってきたんです。1~2年の頃はボランティアの学習支援の先生が付いてくれていたんですが、中学年になるとそこに人を割くことが難しいようで、通級を活用し始めました。通級は個別の時間とグループの時間があって、通常級からは週2時間抜けるんですけど、通常級でできななかったところをフォローしてくれているし、グループでは同じような子と遊んだり、同じような課題をやったり、上手くいかない時の対処法を考えたりしています。
でも今そこが機能していなくて。同じような境遇の中では上手くいくんです。本人としても通級は息抜きにはなっているんですけど、年齢的なものもあって葛藤し始めているんですよね。通常級では「オオカミになる」と本人は言っています。「通級では上手くいくんだよね」って、ちょっとずつ気づいているんです。10歳の壁というのがあって、心も成長して分かってくることが多くなるので、そういう時期なんだなと思ってはいます。
「オオカミになる」という言葉は、印象的ですね。
独特な言い回しをするんですよね。「本人が困らないように、オオカミになっちゃうときの合言葉を作ってみるのはどうですか」とアドバイスはいただいているんですけど、通級ではオオカミにならないので、通級の先生には驚かれています。娘は自分の困り感を少しでも言葉にできているからいいですけど、言葉に出せない子は辛いだろうなと思います。
では最後に、自分の子どもが発達障害かもしれないと気づいて、誰かに言おうか迷っている人がいたら、今のマヲさんなら何を伝えますか?
私はもともと隠せないタイプではありますが、言ったことで結果的に周りから共感とか応援があったので、もしも気づいているのであれば、そのさわりだけでも言ってみたほうがいいのかなと思います。でもまずは、市役所とか周りに漏れないところへ相談してみる方がいいんじゃないかなとも思います。そこから、同じ境遇の人にも会えて安心したので。
バブリングとしては、まず市役所に相談、というケースは珍しいです。
ママ友に言うか言わないかは迷いました。その人自身をあまり知らないこともあって「陰でなんて言われるのかな」「どこまで言っていいのかな」という不安もあったし、がっつり発達障害というワードを出すことで誤解を招きかねないとも思うから。LGBTもそうだと思いますが発達障害も同じで、ちょっとメディアによって知れ渡ってきたので、気をつけないといけないなと。まずは同じ悩みを持った人を見つけて、「どうしたらいいのか」って相談する方がいいのかなと思います。
終始にこやかなマヲさんでしたが、時折しんどかった時期を思い出して涙が見えたりもしました。ただ一貫して「娘さんのために何ができるか」悩みもがきながら、少しずつ前進していく姿が印象的でした。困った時にどうしたか、現実的な解決方法も知ることができて、聞いている側に学びもありました。貴重なお話、ありがとうございました。
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