ゲイ ‐ きみが教えてくれたこと [対談-前編]
2017年5月29日
カミングアウトストーリー
『今回はバブリング代表の網谷と、ご友人である富澤さんの対談インタビューです。
ゲイである網谷が友人である富澤さんに出会い、友情を育み…そして挑んだカミングアウト。
出会いから、いくつもの『あの頃』を大切に積み重ねてきた、今ここにいるお二人。
インタビューを通して過去を振り返ったとき、あの頃の自分たちが教えてくれた、あたたかいメッセージとは?』
今回はインタビューにご協力いただき、ありがとうございます。
早速ですが、お二人の関係性を改めて教えてください。
網谷(以下網):ジャイアンとのび太です。
ジャイアンとのび太、ですか?
富澤(以下ト):愛のあるジャイアンとのび太。
付き合いは中学校1年生から。12歳だよ、12歳。
網:ドラえもん本編よりも、愛のあるジャイアンとのび太。
俺のものは、こいつのもので…
ト:俺のものは、俺のもの。
ただただ網谷に甘えてたジャイアン。
お友達になって、26年。もう人生の半分以上一緒ということになりますが
中学校の頃の第一印象は覚えていますか?
網:イケメンだったことしか覚えてない。すごいかっこよかったの、当時。
ほんと福山雅治みたいな顔をしていて。今は面影もなくなっちゃったけど。(笑)
ト:部活が同じというだけの接点しかないんだけれど
当時の網谷も誰とでも喋る事ができる人って印象だった。
当時、思春期の頃と今で互いのイメージに変化はありませんか?
ト:俺はないかな。まっすぐないいやつってところは今でも変わらない。
網:俺も変わらない。
ト:当時から相談事をしたらまともな回答が返ってくるし、
俺が間違っていたらちゃんと「間違ってるよ」って言ってくれる。
そういうところで、こいつはいい奴、親友だなって。気付いたらそう思っていた。
網:小学生の頃から『親友の定義』みたいなものに拘っていたのだけれど、トミとの関係性は、
親友とは何かを探っている中の育みのひとつだった気がしていて、
親友になりたくてなったわけではなく、結果的に親友になっていたのが正しいのかもしれない。
そして恋愛感情無くとも友達として相手のことが好きだからこそ、
自分なりに考えた上で間違ったことは間違っていると伝えたり、相手に誠実でいようと思っていたよ。
友達や親友ってなんだろうって考える思春期に、
誠実でありたいと思う関係がいるのは素晴らしいことですね。
富澤さんが網谷さんのセクシュアリティを知ったのはいつ、どういう経緯で知ったのでしょうか?
ト:高校生の頃、実家に電話がかかってきて、カミングアウトされた。
それまで、同性愛者に対しての先入観などはありましたか?
ト:同性愛者の存在を認識したのは網谷が初めてだったから、先入観以前に特に何も考えていなかった。
同性愛者に会ったこともないし、どれ位いるかっていうのもわからないし、何も考えていなかったかな。
どんな電話の内容だったのでしょうか?
ト:すごく久しぶりの電話で、どうしたのかなと思ったら「俺の存在とか、命に関わる大切な話があるんだ」
って切り出されて。俺から「え?命?なになに?」って言ってもなかなか話してくれなくて。
その時には「もしかして若くして、何か死んじゃう重い病気にかかってしまったのかな」と思った。
正直聞くのが怖かったけれど聞かなきゃいけないという気持ちも強くて、ようやく「ゲイなんだよね」
って言われて…俺は、とにかく安心した。死ななくて良かったって…。
とても逼迫した状況が伝わってきます…。
カミングアウトされた瞬間、そこでの網谷に対して気持ちの変化は生じなかったのでしょうか?
ト:男子を好きだろうが女子を好きだろうが網谷は網谷でなんら変わりはなくてね。
人が人を愛するように、俺が網谷という親友を好きな気持ちがブレるなんて事ある訳もなくって。
ただただ心からホッとしたのを覚えてる。
網谷さんは、ご自身がどんな気持ちで電話をかけたのか覚えていますか?
網:覚えていない。その頃は、命をつなぎ止めるために、すがるように言おうとしていたから。
あの頃は「人が自分自身を受け入れてくれることなんてあるのだろうか」とすごく悩んだ時期で、
とにかく「死にたい」と思っていた全盛期で…。だから、「助けて」っていう思いで人に伝えてた。
それはカミングアウトをすることで、網谷さん自身が『生きる』という形に繋がっていくのですか?
『受け入れられる』から生きていけるということでしょうか?
網:当時は「ゲイでも生きていていいよ」という確認をしたかった。そして肯定してほしかった。
だから、トミにも受け入れられて安心した。それまでも友達に頼って生きてきたから、
頼る先の『友達』という存在に受け入れられないと生きていけないって思ってたの。
当時まだ女の子を好きにもなれていたから、自分の中でも一体何が嘘で、
何が嘘じゃないかってわからなくて、とにかく申し訳なさがあったの。
『男に興味がある』って隠してトミと友達付き合いをしていたし、
俺の全部が嘘ではなかったけれど、友達に言ってないってことがあるっていうのが、嫌だった。
今思うと、俺が描いていた『親友の定義』っていうのは、もっといろんなことを率直に話す関係っていう
イメージがあって。誠実でいたいのに、そこに自分自らが近づいていないという葛藤があった。
とにかく「助けて」って言いたかったの。「助けて」って言う代わりにカミングアウトしていた感じだよ。
網:なんだったら、こいつの方がよっぽどマイノリティだとも思うけどね。
ト:え?たとえば?
網:音楽とかも、すっごいマイノリティなの聞いていたじゃない。
ト:確かに当時CrustCoreとかAnarchoPunkっていうコアなハードコアパンクが好きで、
中学校の一つ上の友達以外では、東京でそういうのが好きな友達ができたかっていうと、
できない位人口も少なくて、ライブもバンドの人とお客さん15人とかしかいなくて、
そこでも友達が出来なくて。
音楽性も思想も唯一理解しあえる大好きな友達はアメリカに行っちゃって、
後にバンドを組むメンバーと出会うまでは理解し共有できる人もいなくて、
音楽も思想も真剣に取り組んで関わっていた世界だったからこそ、
共有できる存在がいないこと自体が凄い寂しかったし苦しかった。
人生初の孤独を経験したかなぁ。
状況は違えども富澤さんご自身にとって初めて得た孤独感が、
その後の網谷さんのカミングアウトを受け入れられる器にもなったのでしょうか?
ト:網谷のカミングアウトを聞いて、初めて少数派って事を意識した。
マイノリティじゃないとわからない気持ちがあるっていうのが心に芽生えて、
Punkの影響で、大衆につくのをやめようって思っていたのとも繋がっていって。
自分がなれるならば、どんどんマイノリティになっていこうと思っていた。
自分の中のマイノリティの理解を深める行動って、それが自分の成長にもなるしね。
ご自身の成長のきっかけを作ったのが、カミングアウトをしてくれた網谷さんだったのですね。
ト:そうそう。いまだに少数派になろうと思ってる。なりたい。
いや、少数派の味方でいたいって思ってるのかなぁ。
どこまでも真剣に向き合い、一緒に成長してくれる。とても愛のあるジャイアンですね…。
網谷さんは現在、日常生活でカミングアウトをする時に意識していることはありますか?
網:カミングアウトの内容自体を相手がどう受け取るかはその人自身の話だと思うので、
特に何も気にせず、さっさと言っちゃう。受け入れられないなら受け入れないで、それでいい。
あとから嘘ついちゃうのを説明するのも大変だから、初対面で極力言いたいと思ってる。
例えば俺の外見から引用すると、『見た目男性』『メガネをかけているから、もしかしたら目が悪い人』
と変わらないくらいの個人を表現する要素としてさっさと言っちゃった方が、
それから関係性を築きたいと思うかどうかの判断を相手に委ねることができるよね。
自分と相手のためのカミングアウトですね。
網谷さんが学生時代、ご両親にカミングアウトされた時には富澤さんが同席していたと伺っていますが、
なぜそのような形を取られたのでしょうか?
網:怖かったからじゃないかなぁ。親に拒否をされたら、住んでるのが嫌になっちゃうじゃない?
両親・トミ・俺がいるカミングアウトの場をその後どうするつもりだったのか今ではわからないけれど…
当時はその場ですぐに頼れる人が欲しかった。
それにね、うちの親もトミがすごい好きだし、仲が良かったの。
そして親に「俺にはちゃんと俺を受け入れてくれる人がいるよ、ほら、目の前にいるよ」
っていうことを見せたかった。
受け入れているっていう事実を持った人にいてもらうっていう安心感が欲しかったのかもしれない。
網谷さん自身が安心し、落ち着いてカミングアウトをしたかったということなんですね。
網:俺のエゴって言われたらエゴだけどね。
ト:逆に俺だったら誰かにいてほしいって思うもん。心強いじゃない?絶対。
前半はここまでとなっております。
次回の後半では、網谷のカミングアウトに対するご両親の反応
3人を見守った富澤さんからの視点
そして、将来カミングアウトをされる人々へお二人からのメッセージをいただきます。
次回は6月10日!お楽しみに!
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