ゲイカップル里親ニュースに触れて
2017年4月24日
コラム
こんにちは、網谷です。4月上旬、ゲイカップル里親のもとへ子どもが委託されたというニュースが流れ、バブリングの中でも話題になりました。一方でネットの記事では、社会的養護に対する誤った認識をもとにした発言が散見されました。と言いつつ、約3年前の僕は社会的養護という言葉すら知らなかったんですけどね。
ニュースについては、一般社団法人レインボーフォスターケアの藤さんがお話されている記事(「全国初、同性カップルが里親認定」…その意義とは?)をご覧ください。
僕は、NPO法人ブリッジフォースマイルの職員として働き始めて、4月で4年目に入りました。児童養護施設で暮らす又は暮らしていた人たちや、児童養護施設の職員さんと主に関わらせていただいていますが、今回のニュースは、セクシュアル・マイノリティにとって明るい話題でもありつつ、このニュースに良くも悪くも関心を持った方たちやセクシュアル・マイノリティ業界に対して、社会的養護の認知を広げられる機会でもあるのでは、と思っています。
社会的養護とは、シンプルに言うと『保護者に代わって社会で子どもを育てる仕組み』です。厚生労働省のwebサイトには【「子どもの最善の利益のために」と「社会全体で子どもを育む」を理念として】という文言も掲載されており、その理念のもと子どもの養育を担っているのが児童養護施設の職員さんや里親さんたちです。ちなみに、児童養護施設へ措置される子どもの約6割、里親委託される子どもの約3割は虐待(身体的虐待/精神的虐待/育児放棄(ネグレクト)/性的虐待)された経験を持っていると言われています。虐待通告を受ける児童相談所は、子どもがそれまで置かれていた環境や心身の状態、その当時の年齢などを考慮して、より適切に養育ができると考えられる先(=児童養護施設や里親家庭)へ子どもを預けます。
里親制度は、養親と養子が同じ戸籍に入る特別養子縁組とは異なり、一定期間代替的に、子どもに家庭養育を保障するものです。申請し一定の要件を満たしているかの調査や審査を受け、研修を受講し修了した後に、知事の認定がされると里親登録されます。里親登録されたからといってすぐに子どもが委託されるわけではなく、その家庭へ養育を委託する可能性が見えたあとにも、子どもが宿泊したりするマッチングという期間があります。委託決定後も色々で、子どもが18歳以上になり措置解除されるまで養育をするケースもあれば、実親が養育可能となること等により18歳未満でも委託措置が解除されるケースもあります。
色々と書きましたがつまり里親さんや児童養護施設等の職員さんたちというのは、社会全体で育てる必要のある子を、そして何歳までのあいだ何年間委託され続けるのかも分からない子を、率先して養育してくれている人たちだと思います。僕らがやらない又はできないことを、自らやってくれている人たちなのだから、せめて彼ら彼女らのストレスが減るようにできると良いですよね。それがつまりは、その家庭に託される子の利益になると思うからです。
仕事で出会う子たちにのおかげで僕は、知らなかったことを知るようになり、できなかったことができるようになったり、若者が変化し成長していくことの眩しさと尊さを感じられたりしています。きっと日々の暮らしのなかでは大人も子どもも色々とあるだろうし、場合によっては施設職員が大嫌いな子もいるでしょうけど、生き抜いてきた子どもたちの傍に、職員さんたちの踏ん張りは多くあると思っています。
僕らは出会いによって、日々の彩りが鮮やかにもなれば、人生が好転することもあります。いま社会的養護のもとで暮らす子どもたちが、僕らの人生を変える可能性も充分にあると思います。直接は養育していない又はできない僕らが、日々の生活のなかでできることは、児童養護施設等の職員さんや里親さん、一般家庭の親御さんがストレスに感じるような表現や言動を避け、できる限り健やかに養育のできる環境を整えていくことではないでしょうか。そうして同性愛者のカップルに限らず里親登録をする方が増えれば、子どもの養育環境の選択肢も増えて、より安心安全な場所で育つことができるようになります。併せて大切なことは、どのような養育環境で育ったかの話をいつか僕らが受けたときに、先入観を持つことなく対話ができることかなとも思いました。
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