ゲイ – その後を考えたカミングアウトを

ゲイ – その後を考えたカミングアウトを

2017年1月8日

カミングアウトストーリー

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Tさん(仮名)とは、お会いしたときから、すごく物腰柔らかな雰囲気で、周りのことを気遣う心優しい青年という印象があった。

そんなTさんと仲良くなっていくうちに、「実は僕、ゲイなんですよ」とサラッとカミングアウトしてくれた。
しかも「歌番組で母をスタジオに呼んでね」という印象的な一言を聞いてから、その経緯について、ぜひお伺いしたいと思い、お話を伺うことができた。

Tさんは、TV番組を通じて、実の母親にカミングアウトをしたんですよね?

はい。ご縁を頂いて、数年間、連絡をとっていなかった母をTV番組の収録現場に呼び出したんです。

数年間、連絡をとっていなかったんですか?

えぇ。
僕は家で過ごすより外泊していたほうが落ち着ける事が多くなり、そのまま帰らなくなった生活をしていて、 4、5年は母と連絡をとってなかったんです。

保育園の頃から、僕は普通の男とは違うな、って思いながら育っていて、年の離れた姉との間もうまくいかないこともあったり、同級生からはいじめを受けていたこともあって、家でも学校でも居場所がないって思ってたんです。
中学の途中から不登校にもなって、親との関係もずっとうまくいっていませんでした。

でも僕は歌うことがすごく好きで、ある日、知人から、女装して歌いながらパフォーマンスをしてみないか?と誘われたんです。

最初は抵抗があったんですけど、いざやってみると、すごく反響が良くて、しばらく、女装しながら歌うってことを続けていたんです。
そうしたら、TV関係者の方とつながることができて、親にカミングアウトをしていない、ということを伝えたら、「TV番組で、親御さんにカミングアウトしてみませんか?」という提案をしてくださったんです。

それはすごいご縁をいただきましたね。

出演する際に、親が放送することを拒んだ場合は、放送しないってことをお約束いただいたので、出演することを決めました。
カラオケ番組で、何百人という観客がいるスタジオの中で、歌う前にカミングアウトしたんですが、親からしたら、相当びっくりした思います。数年ぶりに連絡をしてきた息子が、TV番組に出るっていうだけでびっくりなのに、いざ来てみたら、まさかのゲイでしたという告白を受けるんですから。

親御さんはどういう反応だったんですか?

自分も親も、感情が高ぶって、わーっと泣いてしまったのですが、収録が終わった後は、特にそのカミングアウトした話題に触れることもなく、あっけらかんと明るい母と姉とご飯を食べて、その日別れました。

ところがその翌日から、母と連絡がとれなくなっちゃったんです。
姉を通じて、様子を聞いてみたら「息子であることは変わりない。けど、職場の人たちがどう思うのか、すごく怖い」って言っていたそうなんです。
「私たちの関係性はそれで良くても、環境が認めてくれない。
自分の子供を否定しなきゃいけなくなるのが怖い」って。

その時に思ったことは、親子関係「だけ」だったら、何も問題ないのに、
そこに「社会」が入ってしまうと、カミングアウトをすることすべてが正しいかどうかはわからなくなっちゃうと思ったんです。

Tさん

親も子も社会の一員ですものね。

正直、僕の周りの人たちは、カミングアウトすることを応援してくれてたし、TV番組でしたことによって、それまで知らなかった方達からも、「勇気をもらえました」とか、すごくポジティブなメッセージをいただくこともできました。

でも、親については、そうやって支えてくれる人がいたわけじゃないし、心の準備もない中で、一方的にカミングアウトするもんじゃないって思いました。

TV番組を放映するかどうか、TV局側にお返事しなければならないギリギリの時間になっても、母と連絡がとれない状況が続いて、カミングアウトしなきゃ良かったかもしれない、ってその時は思っていました。

でも、結局、放映されたんですよね?

母がテレビ局側に直接連絡をとって、「息子の決断を尊重する」ってことで、放映許可をしてくれたんです。

それでも、母と連絡をとることはできなくて、、、それから半年くらい経った時に、自分の素性を知った上でもファンになってくれる人たちが集まるLIVEに、母を呼んだんです。

僕のことを支えてくれてる人が、Tさんがやっていきたいことは「歌を歌う」ということなんだし、セクシュアル関係なく、人間性という面で活躍できることをわかってもらえる機会を持った方がいいって後押ししてくれて、母をLIVEに招待しました。

LIVEに来ているお客さんが僕を応援してくれる姿を見て、こうやって息子を受け入れてくれているって人がいることを知って、母も少しは安心してくれたみたいで、それ以降は、僕のセクシュアルマイノリティとしての活動も受け入れて、見に来てくれたりしています。

それは良かったですね!

えぇ。正直、カミングアウトして、「こんな風に幸せになりました」なんて話もよくありますけど、やっぱり、人それぞれでカミングアウトに至るまでのことも、そして、その後のこともあるな、って感じます。
僕は今はここに着地して、立ってられる。それで正解なんだなって思えていますが。

色々とお話を聞かせて頂き、ありがとうございます。最後にカミングアウトしたいと思っている方へのメッセージをお願いします

カミングアウトしたいと思った時は、信頼できるカミングアウトした人の話を聞かせてもらうことは重要かなって思います。
しかも、いろいろなパターンの場合を聞いておくのが重要じゃないかなって。
プラスなこともマイナスなこともありますから。

あと、自分と色々向き合うことが重要だと思います。
自分の心や、家族のこと、社会的なこと、そういったことを色々と考えたうえでやるのであれば、後悔ないと思いますから。

大切な人へのカミングアウトって、自分とちゃんと向き合うことがあってこそ、初めて大切なものになるんだと思います。

Tさん、貴重なお話、快くお話してくださって、本当にありがとうございました!
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