トランスジェンダー – またひとつ強く、ちゃんと私になれた
2016年10月9日
カミングアウトストーリー
小学校の時から髪を伸ばしたりとか、女性アイドルの歌を歌ったり踊ったりとかしてたし、男子として扱われることが嫌で泣いたり、その頃からそういう意識があったんだよね。
でも、そんな頃って普通に生きていて、セクシュアリティがどうとか考えないでしょ。ただシンプルに自分らしく生きているだけなのに、自分が戸籍上は男だってこととか周りが男として扱ってくる現実を切実に毎日毎日感じていて、それを諦めながら生きていた。
自分ではっきり意識したのは、高校1年生くらいかな。金八先生の上戸彩さんが出ていたドラマを見て、性同一性障害っていうのを知った。それまで自分が同性愛なのかとも思っていたんだけど、そこで自覚した。
その頃、好きな男の子ができて告白したけど、「急に女って言われても男にしか思えない」って言われて、ちゃんと見た目も女性らしくしないといけないんだなって思った。それからショックで4日間もご飯食べられなくて、誰かに聞いてほしくて、もう耐えられなくなって、お母さんに泣きながらカミングアウトしたの。
言った時は黙って聞いていたけど、その時のお母さんは「それって治るの?」っていう段階。
ちょうどそのタイミングで、また別の性同一性障害を題材にしたドラマがやっていて、それをお母さんも見てくれて、それから色々調べたと思うし、今では理解してくれてる。
性同一性障害の人が笑いの対象にされることが多いなかで、ドラマに出演していた中村中さんは特に、そういう描写がない、アーティストっていう貴重なスタイルだったのが良かった。
高1の時、通信制の私服の学校に転校したけど、実家住まいだったから、なかなか女性の服に切り替えられなかったの。そこで勇気を出して、すでにカミングアウトしていた女の子のショッピングについて行ったとき、お店に行っても自分だけ隠れていたら、店員のお姉さんが察して、洋服を何点か選んで「これ着てきて」って背中押してくれたの。本当にあのお姉さんが殻を破ってくれた。
レディースの服が似合うかどうかすごく不安だったけど、それが本当に望んでいたことだったから嬉しかった。お金もなかったから買えなかったけど、お姉さんが1枚Tシャツをくれて、それは今でも持ってる。今思えば、パンツはメンズで超不自然だったけど。それから家でもだんだんレディースの服を黙って着て、洗濯機にぶっこんでった。笑
化粧もバレない程度に少しずつアイラインだけとかから。お金も自信も全然追いついてないから、最初は髪型だけ男性的で短くて、メンズ服で、顔だけバッチリ化粧したりして、不自然だったりもしたけど、アドバイスをくれて少しずつ良くなっていって。
それから1,2年経って、好きな人にアップルパイを作っていたときも、「お嫁さんとしてちゃんとできないといけないでしょ」みたいなことさらっと言われたり、同じ服ばっかり着てたせいか、似たようなレディースの服を買ってきてくれたことがあった。
そういう歩み寄りっていうのは、忘れちゃいけないよね。その時は、馬鹿正直に「全然、デザインが好きじゃないからいらない」って言っちゃったけど。でも気持ちはちゃんと受け取ってる。
そこからどこで親の気持ちが切り替わったかわからないけど、本当に少しずつ、少しずつ。
親でも好きな人でもなんでもそうだけど。自分も人間だし。お互いにそうじゃん。同じ言葉に対して、余裕がある時とない時で返す言葉が変わってきちゃうし。でも、気持ちがあるからこそ、期待しちゃうだろうな。
外でひどい目にあったからこそ、期待も増すんだと思う。すべてあなただけには分かってほしいとか、期待できる自分に対しても、ある意味、期待できるし。まだ人間を信じられるとか。
期待はSOSだと思う。感情ってすべてSOSだから。それがなくなったときに、それはもう「死」だから。でも過度な期待はダメだね。まったく違う人間だから重なり合ったらラッキーだねってくらいじゃないと。境遇も性格も価値観も責任も違うから。
私が16歳で、相手が17歳くらいのときに告白して、ダメだったけど、できるかぎりのことしてくれて、受け止めてくれた。告白して返事をもらう前に、他の女の子に告白されて付き合っちゃったけど。口をきいてくれるだけで、目を合わせてくれるだけで、ちゃんと人扱いしてくれるだけでありがたいなって思っちゃう。いまだにそういう意識はある。
好きな人に受け入れてもらえたことを若いうちに経験できたことは幸せ。それが一番の幸せだから。根っこを分かってくれる人、しっかり向き合ってくれる人、愛してくれる人がいるから余裕ができてきた。毎日毎日傷ついても、いつ人間として生きていけるんだ、いつ女性として生きていけるんだって思ってた中で、心に味方がいてくれたら、どんな境遇に置かれでも、どんな人に何を言われても大丈夫。ずっと探していたから、その場所を。
味方でいてくれる人を裏切らないように生きなきゃって思ってる。モチベーションをみんなが与えてくれたから、やっと生きていられるのかなと思う。そんな簡単に性格も変わらないし、背負っている傷が今も痛むけど、そういう人が増えていくたびに強くなれて、良いふうに変わっていけるんだなって思う。
レスリー・キーさんに撮ってもらいたいなっていうのが後押しとしてあった。
でも、やっぱりメディアとかでニューハーフとかオネエタレントって笑いにされてきたけど、違うでしょ、女性じゃんっていう気持ちが強くて。女性だって思うから水商売しないで生きてきたし、ニューハーフって言葉に傷ついてきたし、お昼の仕事しかしてこなかった。ニューハーフって職業であって性別のことじゃないのに、メディアってセクシュアルマイノリティを全部一緒にしちゃって、オネエって言葉の最後に(笑)が付くのを感じる。それって「人殺し」だと思う。いいこともあるだろうけど、当事者としては、苦しむことが増えたと思う。ゲイで女装家でも「女の心が」って言うけど、違うよね。ゲイって男だもん。メディアがそういうのを求めているのも分かるけど、見ている人はそれが普通だと思う。
そういうのを変えていきたいって思った。私はそれでも立ち上がれたし、生きてこれたけど、できない人はいっぱいいると思うの。そういう人は、声も出せないし、表に出てこれないし、必死に耐え続けて、傷つけられている。そういう人に伝えたい。
こんな私でもなんとか耐えられるように、生きられるようになったから。もっと自信もって、信じて生きていてほしい。自分でもこう生きられるよって伝えたかったから。
本名、顔、年齢とか晒していくことって、リスクはあるよね。なにも言わないで暮らしていけたら一番いいけど、伝えられることに意義を感じた。意義を感じれば、むしろそこで浄化されていくし、抵抗なく話せる。だって事実だし。
今までTwitterでも隠れるようにしてやってたけど、Facebookで見てくれた人がすごく多くて、伝えられる意義があるんだって思った。それまで本当は芸能の夢があったけど、見下されるのが嫌だったし、傷つくのも嫌だったから、そういうのを破いて平気になりたかった。被写体としての自分とか文章を書いていくこととか評価してもらえて良かったなって思う。またひとつ強くなれて、またひとつちゃんと私になれたなって。
OUT IN JAPAN は本当に最高でしかない企画。一気に人生が私らしくなったし、とてつもなく充実した。これがきっかけで他の夢も叶っていったし、自分の名刺みたいになった気がする。
こんな調子でLGBTの活動をラジオとかタレント活動とかもっと大きくしていけたらいいな。一人で講演会とか。今までチャンスとか他の方からいただいてとかだったから、自分で掴み取りたい。いろんなチャンスとかパワーとかもらって、頑張ろうって思える機会ってなかなかないと思うんだよね。一回一回夢が叶っていくこととか、できなかったことができる喜びとかがすれてしまわないうちに。当たり前にならないように。その幸せを噛みしめて頑張っていきたい。
あとはLGBTの働き方の講演ができるボランティア募集があって、そこで今まで言われたひどいこととか、傷ついたこととかも生かせると思う。自分がされたことが時間を経て無駄にならないで誰かのためになって意義を持つなら自分にもプラスになるし。
それから色んなセクシュアリティの知識不足な部分も考えていかないといけないなって思った。そういうのを伝えられる人になれたらいいな。
LGBTについて、知られれば知られるほど誤解も増えるけど、これ以上は悪くはならないと思う。そこで自分という命も少しでも架け橋になれたらいいなと思う。その先で、自分もいろんな幸せに巡り合えたらいいな。思っているより人生って短いと思うから。
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