ゲイ – 相手とどう向き合っていくか
2016年9月5日
カミングアウトストーリー
─今回はバブリングメンバーの弟分として親交の深いコジカにインタビューさせてもらいました!
■その方にカミングアウトしたのはいつですか
高校生三年生の冬休み。
12月25日です。
夜の井の頭公園で。
当時僕は受験が終わっていて、授業がほぼなく、
彼女は大学受験の真っ最中でした。
僕がどうにもこうにも生きることに疲れてしまって、
何をどうして良いかわからなくなって落ち込んでいるときに、
彼女に連絡をして、吉祥寺で落ち合いました。
■カミングアウトしようと思った理由はなんですか?
うーん。どうだろう。正直、勢いでした。笑
「自分の心が死んじゃう」という悲鳴と、
「彼女にはきちんと話したい」という正義が入り混じった感じです。
■詳しく聞かせてください
振り返って話すと
僕は高校二年生のときに、掲示板で出会ったゲイの人とSEXをしたのが始まりでした。
それも意図してなかったというか。
もちろん、多感な時期だったので、性行為についてはすこぶる興味はあったし、
部活も辞めたころだったのでむしゃくしゃしていたのもありました。
だから「もしかしたらそういうことになるかも」とは思ってはいたものの、
SEXを目的としているわけではなくて、
ゲイの人と会ってみたいな、という“衝動”のままに会いに行きました。
結果、ちょっとした接触はありましたけど(笑)。
でもやっぱり、そのあと虚無感と罪悪感に襲われちゃって、
ゲイ活動を辞めようって決意したんです。
それから1年ほどたって、たまたまパソコンで「ゲイ」って検索して、
個人で運営しているホームページを見つけたんです。
しかもこれが、結構たくさんいて、うおー!って興奮したのを今でも覚えています。
いろんなコンテンツがあって、楽しそうな毎日が日記として書かれていて、みんな自分なりの自己表現をしていて、
ネットの向こう側にいるゲイの人たちが全員、恐ろしく輝いて見えました。
で、僕もホームページを、作ってみたんです。勢い任せで。
それから、華々しいゲイ生活がスタートしたした。笑
■高校生デビューだったわけですね、早い時期にいろいろ経験しちゃって。。
そうです!笑
高校生にも関わらずいろんな人たちが僕と会ってくれて、話してくれて、
最初はすごく楽しくて、こんな毎日がずっと続けばいいなって思っていました。
でも、もちろんそんな楽しい時間は長くは続かないわけですよ。
僕は高校生。遊びだって、活動だって、制限されちゃうわけです。
結果として、自分とみんなの間に圧倒的な溝を感じてしまって、勝手にやきもきしていました。
目の前の溝をどうにか埋めたいと思って、その結果、何人かと身体の関係を持つようになりました。
1人、2人と、回を重ねるごとに、溝は埋まるどころかどんどん深く刻まれていって
最終的には自分の心の中が空っぽになってしまいました。何してるんだろ、おれ。って。
ゲイ活動は続けている。でも、学校もいつも通りあって、
みんなと一緒に授業を受けて、ご飯を食べて、笑いながら休み時間を過ごしている。
普通に過ごせば過ごすほど、自分がみんなと違うってことに負い目を感じて、
最終的に、顔は笑っているのに、いつも心はどん底にいる気分になってしまったんです。
そんな時に、ずっと隣で笑って話しかけてくれたのが、稲葉でした。
塾での席も隣で、
帰ってから勉強するときもメールや電話をよくしていて、
兄弟というか、自分の片割れというか、そんな存在だと僕は勝手に思っていました。笑
12月。受験勉強が終わって、余計なことを考える時間が増えてしまっている僕は、
どん底もどん底に落ち込んでいたんですが、
それを察したのか、「会わない?」というメールを彼女は僕に送ってくれました。
ぼくは、「死にたいくらい辛いことがある。だから会えない」と返しました。
すると彼女から「それは大変!余計会わなくちゃ」と、返事が返ってきました。
「でも、もうクリスマスだし、彼氏と会いなよ」
「彼氏はいつでも会えるから。コジカが辛い方が心配。会おう」
「わかった。ありがとう」
そんな風にして、12月25日、井の頭公園に集合しました。
■もし高校生のゲイの子が見ていたらドキドキする内容ですね。そして稲葉への具体的なカミングアウトの言葉は覚えてる?
たぶん、気づいてるかもしれないけど、おれ、ちょっと人と違うんだ。
なんていうか、その、人と違うことが辛くて、悩んでるんだけど。
あんまり人に言えないっていうか。これを稲葉に言っていいかわからないんだけど。
えっとね、おれ、男の人が好きなんだ。
だからそれでずっと悩んでて。実は、ゲイの人たちとも結構あったりしてて。
そういうことが皆に言えなくて、でも変だなってずっと思ってて。
稲葉に言ったら嫌われちゃうかもしれないって思って。それで…
みたいな感じで、ものすげー支離滅裂に話しました。笑
たぶん、こんな感じだったと思う。
■ではカミングアウトしたときの稲葉の反応はどうでしたか?
これが傑作なんです。
話しているうちにぼくがもう泣きそうになって、
稲葉の方を見たら、彼女うつむいてて、何も言わなくて。
「ごめん。嫌だったよね」って言ったら、
めちゃくちゃ大号泣しながらこっちを見てきて、
「コジカ、ごめん。私、コジカのこと何も知らなかった。
コジカがこんなに悩んでたの知らなかった。
私は、彼氏のこと相談したり、勉強のこと聞いたり、色々相談してたのに、
コジカのことは、何も聞いてあげられてなかったんだね。ごめんね。
1人は辛かったね。ごめんね、聞いてあげられなくて。本当にごめんね」
て、もう声を震わしながら泣いちゃって。
ぼく、本当はすっげー泣きたかったのに、泣きすぎな稲葉みて全然泣けなくちゃって、
急に肩の力が抜けて、ほっとしたせいもあって、大笑いしちゃいました。
「ちょっと!なんで稲葉が泣いてるの!俺が泣けないじゃん!!」って。
結局二人で大笑いして、僕のシリアスなカミングアウトは幕を閉じました。笑
■私も二人を知っているだけに納得しちゃいます。笑 カミングアウトしたあとの関係性は変わりましたか?
特段変わることはないですかね。
でも、今までずっと後ろめたくひた隠しにして活動してきたことを稲葉に話すことで、
自分のやっていること、生きることが肯定できるようになりました。
2人の関係性というよりは、自分の中の自分を処理できるようになった感じですね。
もちろん、楽しかったことをそのまま共有できるようになったし、
2人だけの秘密を持つことで、より親密になったように思います。
ちょっとしたことでも共有するようになりました。
■カミングアウトしてよかったこと、辛かったことはありますか?
良かったことは、さっき言ったように、自分を肯定できるようになったことです。
自分は変なんだって思うんじゃなくて、ゲイだから手に入る楽しさをきちんと楽しもうと思えるようになりました。
腹落ちしたことで、活動的にもなったし、社交性もぐんとあがったと思います。
もともと人と話すことは大好きだったので、よりおしゃべりになりました。
おしゃべりになりすぎて、怒られることも多かったほどです。笑
バブリングの代表にも何度怒られたことか…ブツブツ。
今ある関係性や環境を生かして、自分しかできないこと、自分だからできるこっと何だろうって思って、
同い年のゲイやノンケと一緒にホームページで何かイベントをしてみたり、コンテンツを作ってみたり、
稲葉とはその後大学生になってから本を作って2人展を開いたりしました。
今ある価値観とか、経験とか、人脈はすべて、あのカミングアウトから始まったんだと思います。
辛かったことももちろんあります。一言でいえば、距離を見誤ったこと。
カミングアウトして数か月たったころ、稲葉をゲイもいる大きな飲み会に連れていったんです。
そのときに、もちろん男同士がいちゃついたり、オネェ言葉を話したり、キスをしたりしていて、
僕はすごく楽しくて、稲葉をそっちのけで楽しんでいました。
その時は稲葉も楽しそうにしていたんですが、それから稲葉と数か月連絡が取れなくなりました。
何度も連絡して、ようやく電話が繋がったときに理由を聞いたら
「ごめん。気持ち悪かった」
と言われました。
そのとき、文字通り、雷に打たれたような気持ちになりました。
ぼくは、辛くて辛くて稲葉にカミングアウトして、受け入れてもらっていたことをいいことに、
稲葉の気持ちや心の準備を無視して、自分の想いだけを押し通し、彼女のことを見ていなかったんだと。
泣いて、ごめんねって謝ってくれた彼女を置いてきぼりにして、
僕だけの気持ちを押し付けて付き合っていたんだと。
実は同時期に母にもカミングアウトしているんですが、
言った当初は「生んで情けない」と言われたりしていて。
この経験から、僕にとってカミングアウトすることは
「相手に僕の荷物を少ししょってもらうこと」だと認識しました。
僕は確かに楽になるんだけど、でも、反対に彼女はゲイという世界を知り、受け入れ、
時には「コジカってゲイなんじゃないの?」という発言に、「え?そう?わかんないや」って嘘をつかなければならない。
そういう、背負わなくて良い荷物を背負ってもらうことになること。
そういった覚悟が必要なんだと思うようにしています。
あでも、結局、稲葉とも母とも、今はうまくやっています。
稲葉はその後すぐにゲイをきちんと受け入れて、
大学三年生の頃にはカミングアウトしていないゲイの子から「姐さん!」と呼ばれていたし、
最終的にはどんどん羽ばたいていって、二丁目で友達を作って、
僕よりも二丁目で遊んでいた時期もあります。笑
今は結婚して、子供ができて、すっかり落ち着いているようですけど。笑
母とも一定の距離を保ちつつ、祖父母の家に行くときに結婚の話が出たら、
「コジカは仕事を一生懸命しているから」と言ってくれたり、
「これ、お土産。みんなで食べて」と旅行のお土産を渡してくれたりします。
時間という薬が傷をすっかり治してくれていますが、
「良かったこと」も「辛かったこと」も、
今の僕と関わる人たちの距離感をしっかり作っているなと思っています。
■ものすごい共感します。カミングアウトされた側への配慮ですね。そういった経験も踏まえて
自分のマイノリティと向き合っている人へアドバイスあればお願いします。
この場で言うのにふさわしくないかもしれませんが、
「カミングアウトをする」ということに関してはおすすめしません。笑
だって、カミングアウトをすることが重要ではなくって、
その後の距離をどう形作っていくのかということが大切だから。
自分と相手の距離を作るのは、「普通と違う」から、大変なことが多いです。
でも、「普通と違う」から、親密になったり、オリジナルを作ることができるのも事実です。
カミングアウトをすることよりも、相手とどう向き合っていくか、どう付き合っていきたいか、
ということを大切にすることが重要だと僕は思います。
解として、カミングアウトをしない方がうまくいくことだってあるはずです。
だって、それが自分と相手の「正解」なのかもしれませんから。
ぜひ皆さんには、カミングアウトをする前に、目の前の大切な人を大切に思って、
どんな距離で生きていくのかを、考えてみてほしいと思います。
その結果、カミングアウトすべきだと思えば、距離を縮める手段として、
カミングアウトをしてもらいたいなって思います。
僕の勝手なカミングアウト論ですけどね。笑
●コジカ、今日は本当にありがとうございました!
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