カミングアウト -問題を共有し、自分と周りの人をより過ごしやすくするためのスタート

2016年2月22日

コラム

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バブリングに携わり始めて3カ月。様々な出会いに心地よさを感じる日々です。

今回は、ADHD(注意欠如多動性障害)に向き合い始めたことについてお伝えします。

私は、児童自立支援施設の中にある学校の教師です。
そこは私が中学生のときに過ごした場所でもあります。
自分を育ててくれた場所で働けることを誇りに思います。
しかし、様々な困難を抱える子ども達と本気で向き合うほど、私の精神は擦り減っていきます。福祉と教育の連携がうまくいかないことも重なり、昨秋からストレスフルな状態が続きました。

すると、注意欠如や衝動性が顕著に現れ、日常生活に支障が出るようになりました。
貴重品を何度もなくしたり、時間を読むことができず出勤や待ち合わせの時刻に遅れたり、片付けができず家の中がごちゃごちゃになったり、物事の優先順位が付けられなくなりました。
自分を思い通りに動かすことができなくなっていったのです。

これらの症状は突然現れたわけではありません。
母が幼い私を児童相談所に連れていったのも、ADHDの症状に悩んでのことです。
中学生から始まった里親との生活に適応できず、わずか4カ月で児童自立支援施設に移ります。環境が大きく変化した大学院生時代や教員一年目には、自己コントロールを失い、大切な人間関係を壊してきました。

昨秋、職場のストレスによって再び症状が顕著になり、自信を失い始めた頃、転機が訪れます。
親しくしている同期がUSBメモリを紛失し処分を受けたことが、新聞に載りました。このままの状態を放っておけば、私もトラブルを起こして周囲に迷惑をかけてしまう―私は、思い切って自分が困っていることを先輩に伝えました。

「俺もそういうことはよくあるよ。気にしすぎなんじゃない?」
「仕事以外で活動しているみたいだけど、忙しすぎて本業が疎かになっているのでは?」と上司。私を助けようという想いからのアドバイスであることはわかりました。しかし、このままではきちんとした理解を得られそうにありません。

そこで私は、精神科でカウンセリングや心理検査を受け、ADHDの診断を受けました。
そして、ADHDの症状が顕著になった理由や今困っていること、対処をしなかった場合にうつ病の発症や重大なトラブルを起こすリスクがあるということ、今後どのように改善していこうとしているかを図にまとめ、成人ADHDの資料とともに、上司に渡しました。

上司は「そういうことだったのか」と納得してくれて、「無理はするなよ」と声をかけてくれました。その日から、「書類、明後日に提出だけど、大丈夫?」と、締め切りを思い起こさせてくれたり、夜遅くまで残っているとき、「明日もあるよ、遅れずに来られそう?」と声をかけたりしてくれるようになりました。

上司や同僚が気にかけて下さったおかげで、職場で落ち込むことが少なくなりました。また、心の状況や苦手なことをはっきりと伝えられたり、起こす可能性のあるミスを事前に知らせたりすることができるようになりました。ADHDであることを伝えてから、職場が少しずつ過ごしやすい環境になっています。

振り返ると、自分の価値観に一つの変化があったことに気付きます。
以前は、周囲から「頭が良い」「行動力がある」という評価を得ることで、自分のダメな部分をごまかそうとしていました。でも、「ありのままの自分」でいたほうが、自分をより深く理解してもらえることに気付いたのです。

自分が生きやすい場所を、他者とのかかわりの中で実現していく。そのスタートは、ダメな自分を受け入れ、ありのままの自分を世界に発信することです。

2016年は、ADHDであることをFacebookで公表したり、ADHDの方のお話を伺ったりと、ADHDと向き合う機会が増えてきました。今回お伝えできなかったことは、またの機会に。

–WriterProfile—————————————-
NPO法人バブリング 川瀬
性別 男性
セクシュアリティ:異性愛者
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