[連載]カミングアウト日記 第6回(最終話)

2016年3月23日

コラム

この新コラムは 最近バブリングのボランティアをスタートしたNORI(ゲイ・31歳)が今年の正月に和歌山に住む家族へカミングアウトするまでの状況・心境を1か月前からつづった日記を連載コラム形式でお届けします。リアルな今の心の心境・赤裸々に語った過去、家族の話。全力で自分とそしてカミングアウトと向き合ったストーリーです!

nori

本日は第6回で最終回。前回のストーリーはこちら

12月31日(木)「再会」
約1年ぶりである。
家族との再会。
町並みは変わらないが、確実に時間は流れており、僕がそうであるように、皆年を重ねていっている。心なしか父も母も身体が少し小さくなったように感じる。
もうすぐ70歳の父と今年60歳になる母、無理はないか、僕ももう30歳だから。
相変わらず家では父も母も姉もよく喋る。僕はというとそんなに口数は多くない、いつものことである。
家族っていつまでも変わらないもんだな、とこの空気がそれを感じさせる。
なんとなくこの1年間をゆったりとした流れる時間の中でのんびりと感じながらいろんなことを振り返る。
ありのままの僕のことを多くの心ある人に伝え、そして受け入れられた本当に幸せな時間が多い一年だった。新しい僕にも出会えた。人ってまだまだ変われるんだなと学んだ。
そしてまた一歩前に進んで変わるために、ついに明日その日がやってくる。

カミングアウトの結末は今はまだ誰にも分からない。

1月1日(金)「カミングアウト」
穏やかな天気の昼下がり、父も母も姉も揃い、ついに僕は話を持ち出した。
もう腹を括っていたからか心は思った以上に落ち着いていた。
事前に話したいことがあると伝えていたものの「僕はゲイなんだ。」というカミングアウトは予想ししていなかったようで、皆揃って「全然思ってなかった、気づかんかった。」と驚いていた。
まず姉は「ゲイでも僕は僕。何も変わらないよ。」と容易に受け入れてくれた。
母はなかなか話が理解できず「これからもっと好きになれるような女の子見つけたら良いんか。」等よく理解していなかったので、一つずつゲイとはこうなんだよ、という説明をした。
最終的に「良い男やのにもったいないな。まぁでも大事な息子には変わりないし、大きな病気したり犯罪したり、借金に困ってとかよりは問題ないし、大したことないわな。」と前向きに捉え受け入れてくれた。
父の反応は意外だった。もっと感情的に声を荒げるかと思ったが、少しは余裕がないあまり、そうゆう場面もあったが、ほとんどは冷静に僕に質問し、僕はそれに答え、結婚も子供も、まずこれからないということは理解してくれた。
自身の老後の話など話が飛んだりもしたが、ショックが大きかったようで否定も肯定もできないといった感じだった。
やはり一番ショックを受けていたのは父だった。
それから僕は出かけ、その日の夜に家に戻った。
父はそのときひとこと言った。「まぁなんにしろ、いつも言ってるけどよ。楽しく、幸せな人生を送ってくれたええ。自分の人生や。」と。
その言葉を聞き、僕は背を向けた。
分からないように少し泣いた。‥ありがとう。

1月2日(土)「終わり」
親へのカミングアウトを終え、何かが劇的に変わったか、と言われたらそんなことはない。
やっと終わった、というよりは何か始まったな、という気持ちの方が強い。
これからもまた親と向き合っていくことはある。
だけど確実に今言えることは一歩進んだということである。
だからまた新しい何かが始まっていく。後悔は全くない、心はとてもすっきりしている。
背負っていた重い荷物を、長い間歩き続け、ようやく下せたときの感じに近い。

自分がゲイであることが知られるのを恐れ、男っぽく振舞おうとしていた僕、それがいつの間にか身体に染みついて本当の僕がよく分からなくなった僕。
だけどそんな全てが今に繋がって今の僕がある。だから今の僕が僕なのだ。
僕は決して強い人間ではない、だけどそんな僕でもこうやって自分と向き合って、これだけ変わることが出来た。
カミングアウトは一人で闘うものだと思っていたけれど、そうじゃなかった。
決して一人じゃないし、そして向き合うことである。自然体な自分で、自分が自分らしく生きていけるように、そんな人たちで世界が溢れていきますように。

長い時間をかけて僕が変われたように、人はきっといつだって変わることができるから。

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連載カミングアウト日記
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–WriterProfile—————————————-
NPO法人バブリング Nori
男性
セクシュアリティ:ゲイ

大阪で生まれ、現在は児童福祉の現場で働きながら
バブルバーにも不定期でカウンターに入る。
カミングアウトと向き合い、葛藤しながらも自身の経験を伝える為に筆を執る。
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