[連載]カミングアウト日記 第4回

2016年3月11日

コラム

このコラムは 最近バブリングのボランティアをスタートしたNORI(ゲイ・31歳)が今年の正月に和歌山に住む家族へカミングアウトするまでの状況・心境を1か月前からつづった日記を連載コラム形式でお届けします。
リアルな今の心の心境・赤裸々に語った過去、家族の話。全力で自分とそしてカミングアウトと向き合ったストーリーです!

nori

本日は第4回。前回のストーリーはこちら

12月16日(水)「睡眠」
元々僕はよく寝る方だ。寝ることも昔から好きだった。寝ていると何だか現実から離れている気分になったりできる。最近気づいたこともある。
何かに疲れているときや、調子が良くないときや現実と向き合いたくないときは、睡眠時間がかなり長くなってしまうということである。
ここ1,2週間とにかく休みの日なんかはなかなか朝起きられず、気づけば昼を過ぎてしまうことも多い。ここまで寝てしまうのは僕の中でも珍しく、何が原因だろうかと考えていると、「このカミングアウトに向けて」が影響しているように思える。
カミングアウトする日となんだか向き合えていない気持ちと、またこうやって日記を書いていく中で、思い出したくもない記憶とも向き合っていくことで、かなり心は不安定気味なんだな、と僕自身そう感じる。それだけ僕にとってはこのことが大きなことなのだと改めて考えさせられる。親とのその日を迎えたくない気持ちと、早く迎えてすっきりしたい気持ちと、心は両極端に揺れ動いている。

12月17日(木)「不安定」
12月に入って、そしてこの日記を書き始めて気付いたことがある。というか感じたことに近いが、心が落ち着かない、というか調子が悪い、なんだか安定しない。
カミングアウトに向けてもそうだし、心がザワザワとしている感じである。だからかもしれないが、少しのことでも落ち込んだり、イライラしたり、些細なことが気になったり、よく言えば感覚が鋭くなっているのかもしれない。
いろんなことに意識を向けやすくなっている、良くも悪くも。
毎日日記を書くことも、思春期のときみたいに心が多感な時期は別として、30歳にもなって日記を書くというのは自分と向き合わなければ、書くことも思い浮かばない。ボールペンを握ってしばらくぼーっとしているのもよくあることである。
あと半月程、これを通して大変なことや辛いことも多々あるけれど、僕は僕から逃げずにやり切りたいと思う。

12月18日(金)「強さ」
強さとは何だろうか。
若い頃、人への頼り方が上手く出来ず、間違った形で多くの人に迷惑をかけた。それ以来二度とそうゆう間違いはしないと強く思うあまり、なかなかうまく自分の弱さを出せなくなっていた。いつしか何でも自分で頑張り、自分自身で心を、気持ちを整えていくことが強さだと思うようになっていた。
そんな僕だけれど、ここ最近は少しずつ気持ちも考えも変わってきている。
だけどまだ何か話を聞いてほしいな、と思ってもどうしようかと思っているうちに自分で解決しようとしてしまう。それが悪いことだとは思わないけれど、なんだかそうゆうところも自分もまだまだだな、と思える瞬間でもある。
カミングアウトもずっと自分一人が頑張ることだと思っていた。だけど気づけば、一緒に色々と考えてくれる人もいたり、話を聞いてくれる人もいたり、応援してくれる人もいる。
僕にしか頑張れないこと、やらなきゃいけないこともあるけれど、僕だけが頑張らなくてもいいことや、一人じゃないという強さもある。まだまだ僕は変わっていける、これからも。
周りの人たちに支えられて。

12月19日(土)「父親」
父の話をしたいと思う。
父は陶芸家。大阪の岸和田で生まれ育った父は、土地柄も血筋も関係してか、喧嘩っ早く血の気は盛んだった。子どもの頃はよく殴られ、躾は厳しかったように思う。
家では父の言うことは絶対的であったし、なかなか僕の話は受け入れてもらえなかった。
いつしか僕は父を嫌うようになった。
とにかく高校を出たら、実家から遠く離れる、それが当時の大きな望みだった。それからは避けるように関西を離れ、各地を転々とした。
父のことを嫌わなくなったのは日本を離れ、海外で1年近く過ごした時間がとても大きかった。何があっても味方でいてくれる存在の大きさに気付けたからだ。
けれどその後も地元を離れるように転々とし、今も東京で過ごしているというその理由は、近くにいるとつかなくても良い嘘をつかなければいけないことも影響している。
それは僕がゲイだとカミングアウトしていないことにつながる。
嘘をつくたびに心がもやっとする。
本音を話せないなら話したくない、そんな気持ちから、今に至るまで家ではあまり多くを話さない。
カミングアウトしたら何かが変わるのだろうか。
僕が生まれたとき、父は本当に嬉しくて、それまでほとんど飲まなかったお酒を、その日から毎日飲むようになったそうだ。
今でもその気持ちは変わらないのかな。

12月20日(日)「自分」
30歳になり、友達にはタイミングが合えばゲイであることをカミングアウトしている。
幸い、僕の周りにはカミングアウトしたことで関係が悪くなった人は誰一人おらず、皆受け入れてくれている。世の中が僕の周りの人たちのような人ばかりだったら良いのにな、と思いながら、僕は周りの人たちに恵まれている。
そんな中でも多くの人が返してくれる言葉がある、それが「あなたはあなただよ。」「僕は僕だよ。」という言葉。
ゲイであろうとなかろうと、そのことが僕の全てではないし、ただそれだけの話で「僕は僕だよ。」その言葉がなんだか嬉しくて、心が温まって、幸せな気持ちにさせてもらえる。
そうだよね、「僕は僕。」「自分は自分。」それだけは何も揺るがない。
僕は僕とこの先もずっと一緒なんだから。

12月21日(月)「自信」
自分も他人も、何もかも信じられなかった10代を経て、20代は自分を信じることから頑張ることにした。
自分はダメな人間じゃない、自分なら出来る、とにかく後ろを振り返らず、前を向いて歩いていった。いろんなことにもチャレンジしたし、出来そうにもないことも行動してみたり、知らない土地も、新しい仕事も、不安に打ち勝って突き進んできた。失敗もたくさんあったし、心が折れそうなときも数えきれないし、一人、涙したことも何度もある。
とにかく自分を変えたい、成長したいという気持ちが強かった。だからとにかく突っ走った。そんな20代の10年間だったと思う。あんなに自分のことが嫌いで、自分に自信もなく、ネガティブだった僕が、気付けばポジティブに、自分のことを好きになり、そして何より僕が僕を信じることができた。それが自信というものだった。
人は変わることが出来る、僕がそうであるように。

12月22日(火)「信頼」
ずっと人を信じていなかったわけではない。
今までだってそれなりに人を信じてきた。
だけどそんな中でカミングアウトを出来ていない自分に違和感を感じるのは年を重ねれば重ねるほどに深まった。
カミングアウトをしても関係は何も変わらない、それはその人を信じていれば、信頼していれば、言葉にして伝えられるのではないだろうか。
僕には長い間、その勇気も、その人を信じる力もあまり持てなくて弱い僕だった。それはきっと自分に自信がなかったからだ。だけど長い時間を経て、自分を信じられる今だから、ようやく大切な人をより信じられ、信頼して本来の僕を明かせるようになってこれた。
全ての過去が繋がって今になっている、そのことをとても強く感じている。
信頼を築けた人たちと歩んでいく未来がこれからとても楽しみだ。

12月23日(水)「予兆」
なんだか身体が重い。そしてだるい。
なんだか身体がいつもの自分と違うように思える。
風邪でも引いたか、それとも色々考え込み過ぎて疲れてしまったのか、いずれにしろ良くない状態なのは確かである。
あまりストレスを溜め込まないタイプだとは今は思っているが、カミングアウトのこともあってか、心の揺れ動きや、上がり下がりも大きいのも、ここ最近では自分も感じている。
カミングアウトってこうやって追い込んで伝えるものなのか、とふと思うときもある。伝えたいと思ったときに伝えるものなんじゃないのか、と考えたりもする。
何が正しいのかは僕には分からない。
だけど一つ言えるのは僕は僕から逃げたくないし、僕は僕とちゃんと向き合っていきたい。だから僕はそういった意味でもカミングアウトをしようと思う。
根拠はないけど、今がそのタイミングだとなんだかそう思えるから。

12月24日(木)「イブ」
現実は本当に何が起こるか分からないものである。
朝起きると下痢、嘔吐、発熱が止まらない。それが1日中。悪い予感はしていたものの、ウイルス性胃腸炎だった。それがまさかのこんな日にである。
デートの予定がなかったのは喜んでいいのか、悪いのか、なんとも言えないが、こんな強烈で体調が最悪なのも人生においてなかなかない。
こうなると他のことは何も考えられない。
とにかく楽にしてくれ、ということを祈るばかりである。
つくづく先のことは本当に分からない、良いことも、悪いことも。

–WriterProfile—————————————-
NPO法人バブリング Nori
男性
セクシュアリティ:ゲイ

大阪で生まれ、現在は児童福祉の現場で働きながら
バブルバーにも不定期でカウンターに入る。
カミングアウトと向き合い、葛藤しながらも自身の経験を伝える為に筆を執る。
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