ゲイ・ADHD – 生きづらさを乗り越える勇気
2016年3月27日
カミングアウトストーリー
中学生のときです。ゲイであることをカミングアウトした中学校教師が、自らの経験を題材にした演劇作品をつくったことが新聞で紹介されているのを見て、自分もゲイだと思いました。
高校1年生の秋に、同じ部活の女の子にしました。それから高校の友人に少しずつカミングアウトするようになりました。心の奥に秘めた一番重要な部分であることを汲み取ってくれた友人ばかりで、カミングアウトしたことで、以前よりも仲が深まりました。
高校3年生のときハワイへ3ヶ月の短期留学をする機会があって、2週間お世話になったホストファミリーに向けてカミングアウトをしました。ホストファミリーは、実のお子さんの他に数人の養子を育てている老夫婦でした。たくさんの養子を育て上げたご夫婦であったことと、セクシュアルマイノリティがいることが当たり前なハワイは日本より考え方が進んでいると思い、「二人に本当の自分を知ってほしい」と思うようになり、はじめて「親」以外の大人に向けてカミングアウトしました。
ホストファミリーの家で食事をしていて、恋愛の話題になったときに、思い切って打ち明けました。
とても温かく聞いてくれて「You just human(あなたは人間よ)、人を好きになることは素晴らしい。男も女も関係ない。自分を卑下することなく、誇りをもって生きなさい」と励ましてくれました。
当時はまだ、セクシュアルマイノリティであることをカミングアウトしている人が少なかったんです。けれど、私は、カミングアウトをすることで明るい未来を想像することができるようになりました。大人から激励を受けたことがとても自信になり、カミングアウトしたり、ゲイであることを認めたりすることは正しいことなんだと思うようになりました。だから私がどんどんカミングアウトしていって、まだカミングアウトできない人の励みになりたいと思いました。この経験は、15年経った今でもはっきりと頭に残っていて、私のお守りになっています。
セクシュアルマイノリティで悩んでいる人は、ゆっくり対話をする時間を必要としています。だから、本人が言いたいことを否定も肯定もせず聴いてあげてほしいです。その上で、はっきりと認めてあげてほしい。曖昧な反応だったり、話を逸らされたりすると不安になるので、一言だけでもいいので思ったことを伝えてほしいです。
大学生のときに、授業についていくことや友人関係を築くことが難しくなって、引きこもりがちになりました。当時流行っていた、『片づけられない女たち』という本を読んで、「自分もADHDだ」と思いました。集中力が持続せず、片づけられない、また、頭の中が常に混乱してもの忘れが多く、アルバイトでは何度も同じミスを繰り返してしまいました。また、時間配分が苦手で、約束の時間に遅れてしまいます。また、たくさん寝ても常に眠い(過眠)という症状もあり、夜更かしして遊んだりもできず、人と同じことができないことがコンプレックスでした。
同じミスで何度も同僚を怒らせてしまい、体調不良にさせてしまいました。人間関係を築くのが苦手で、大勢の話についていけなかったり、他人の話に興味を持てなかったりしました。社会での振る舞い方について繰り返しアドバイスをくれる友人がいて、その人のおかげで最低限の社会性を身に付けることができたのですが、その友人もうつにさせてしまいました。相手との距離が近いほど自分のボロが出て、相手を巻き込んで、自信を無くしていきました。
大学を中退してアルバイトをしていた頃(2007年)、自分の症状がADHDなのかはっきりさせたくて、精神神経センター病院に行ってみました。しかし、当時の日本は、成人のADHDについて詳しい医師はまだ少なく、「ADHDの傾向はありますが、生き方の問題です」と言われただけで、どうしようもありませんでした。
2010年代に入ってADHDも認知が広がり、インターネットでいろいろな情報が得られるようになりました。また、2012年、2013年には、成人にもADHDの薬を処方できるようになりました(ストラテラ、コンサータ)。成人のADHDに対する世の中の関心の高まりもあり、2014年4月には、意を決してもう一度病院(心療内科)にかかりました。病院では、心理検査をやったり、親から子どもの頃の様子を話してもらったりしました。診断の結果、ADHDの傾向はないと言われてしまいましたが、症状に苦しんでいる状況についてもう一度丁寧に説明をして、5月にようやく薬(ストラテラ)を処方してもらいました。(実際に、ADHDの方が診断で「ADHDではありません」と誤診を受けることは少なくありません。しかし、「本人が生きていくうえで支障が出ているなら、それはADHDであると診断をするべきである」と言う意見もあり、医師側も更なる理解浸透が重要になっています)
今年に入って、思いきって上司や同じチームの同僚数人にADHDであることを伝えました。きっかけは、2014年に始めたストラテラを2015年12月に1ヶ月ほど切らせたところ、元の症状がぶり返し、仕事や日常に著しく支障が出た事でした。自分が気付かないうちにストラテラがADHDをとても改善させていたことを痛感し、本来の自分に対して自信を失いかけましたが、奮起しました。改めてADHDがどうして起きるのか(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンの三大神経伝達物質のしくみ)や、薬の知識などを学び、もう一つの薬(コンサータ)に変えてもらい、そして、今後の人生のために会社にきちんと伝えておこうと決意しました。
「なるほどね」、「つながった」と納得感を示してくれたり、「よく言ってくれた」と感動してくれたりしました。カミングアウトしたあとは、「明日締め切りだけど、大丈夫?」と声をかけてくれるようになって、相談もしやすくなりました。ADHDであることを認めてもらえたことは、一番の救いです。なかなか難しいかもしれませんが、自分のためだけではなく、相手に余計なストレスを与えないためにも、もし信頼できる相手にはカミングアウトをしたほうがいいと思います。それは職場でも、プライベートでも変わりません。
ADHDはまだまだこれから理解が必要な障害ですが、悩んだときは、勇気を出してとにかく何かをしてみることで、未来が広がると思います。私の場合は、薬を切らしたときの絶望から奮起して、ADHDのサイトや当事者のブログを調べて得られた学びが大きかったです。そして、ADHDであることに対して、卑屈にならないでほしいです。ADHDは、集中力が持続しない代わりに発想力があり、得意なことに没頭できたりと、良い面もたくさんあります。私も、計画性や集中力のコントロールは周りの理解もあって注意を払いつつ、ADHDの特性を活かして色々な「思いつき」で仕事に活かせていると思います。普通と違うことはダメなことではありません。人と一緒のことをする必要はないと思います。出来ないんだから仕方がない、できることを自分らしくやろうくらいの心構えで。無理をせず、ありのままでいいと思います。
こちらこそありがとうございました。
タカユキさんブログ
(セクシュアリティのことやAGAのことなど、これから発信していかれるそうです!)
http://mebaritaka2.blog.fc2.com/
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