実家が神社 – 決意を持って、打ち明けた先に見えたもの

実家が神社 – 決意を持って、打ち明けた先に見えたもの

2016年3月6日

カミングアウトストーリー

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これまではセクシュアルマイノリティのカミングアウトにフォーカスを当ててきましたが、今回は「大切な人へのカミングアウト」ということで、どんなカミングアウトについてお話いただけますか?

実は、実家が神社なんですよ。
神社を継ぐということは、結婚する相手には、宗教だとか、しきたりとか1年間の行事とかをすべて合わせてもらわないといけないので、それを受け入れてもらえるかどうか話さなければいけませんでした。

なるほど。そういうカミングアウトもあるんですね。

神社は大阪にあるので、いつか東京から大阪に帰らないといけない。そこで神社をやらないといけない。また、神社だけでは食べていけないけど、必ずやらないといけない仕事だという話をしないといけませんでした。
客観的にみると、すごく面倒くさいことで、それをしがらみと言われたこともあります。
損だね、かわいそうだねって。自分ではそう思っていないんですけど。

今は、どんな時にご実家に戻られているんですか?

年1回のお祭りの日と年末年始は帰っています。生まれてから年末年始は神社のことしかしたことないので、まともに紅白歌合戦も見たことがありません。
この前の年末年始に初めて奥さんを連れて帰るとき、忙しいから覚悟しておいてねと話しておいたんですが、奥さんはこれまでのゆっくり過ごす年末年始と違って、ずっと休めなかったので、やっぱり大変だったと言っていました。

実家が神社であることは、ある程度大人になってから意識し始めたのですか?

若い頃、付き合うときはそこまで考えていなかったけれど、頭の片隅にはずっとありました。就職するときも、神社を継ぐことを前提で仕事を探したり。たまたま面白い仕事があったので、東京に来てしまいましたが。笑

やっぱり「自分」という人間が生きていくにあたって、一番根っこの部分にいつもあったということですね。

神社を継ぐという事実は変えられないので、合う人を選ばなければならない。合わなければ、早い段階で諦める必要がありました。

奥さんになる人に話そうと思ったタイミングやきっかけがあったのですか?

最初から絶対に結婚すると思ったので、すごく早めに話しました。本人はまだすごく若くて、結婚しようという話が全然出ていない頃でしたが。

前もって、この日に言おうと思っていたんですか?

今日言わなきゃと準備して臨んだわけではないですが、チャンスがあればすぐ言おうと思っていました。

なぜこの人には話せると思いましたか?

一緒にいる中で絶対に大丈夫、分かってくれる、共有できるという瞬間があった。
例えば、僕が趣味で流木や石を拾っていたことがあって、それを気持ち悪いって言う人もいたけど、今の奥さんは面白いって言ってくれたり。人の感覚を否定しない人だと思っていました。

今まで、その話をして受け入れられなかったことはありましたか?

奥さん以外には、そこまで決意して話したことはないですが、その前の段階で諦めて、そういう話をせずに別れたことはあります。

友達に対しては「打ち明ける」というほどの深刻さはないけれど、結婚したい相手に対しては、言わないと前に進めない性質の話ですね。

友達に話すときは、ハードルは高くないです。
カウントダウンイベントに行けないぐらい。笑
一方、付き合うとか結婚するという前提で考えると、すごく大きなカミングアウトになる。それは絶対。

フジイさん【手】

話は変わりますが、フジイさんは、今は教員という職業柄、打ち明けられる側になることも多いそうですね。

例えば、テストの点数が悪い子と信頼関係を築いて色んな話をしていたら、家庭環境が大変で家で勉強できない理由があることが分かったり。
子供が何か問題を抱えていると思っても、教えてって言っても話してくれるわけではない。子供たちも本当は誰かに言いたいし、誰かに救いを求めている。けれど、言うべき大人がいないと話してくれない。全然違う話を普段からして、常に話してもらえるような機会を設けて、信頼関係を築いています。

誰しも人から何かを打ち明けられる立場になることがあると思いますが、そんな時に気を付けていることを教えてください。

打ち明ける側は、すごい決意をもって話すと思うんですよね。どんな話でも話して大丈夫だよ、という雰囲気をつくらないといけない。
どんな話でも気にしていないよとか、そう思うのは当たり前のことだよ、普通のことだよという態度を見せる。多少の動揺を見せただけで、相手を不安にさせてしまうから。
それから、重たい話だと口に出すだけで本当につらいと思うけど「そんな大事なことを話してくれてありがとう」と言うかな。

カミングアウトしたときに「話してくれてありがとう」と言われると嬉しいですね。だからどうしたの、と言われると届かなかった気がして悲しい。打ち明けられる側がどう振る舞うべきかは大きなテーマですよね。

話してもらえると、信頼されている気持ちになるし、応えなきゃという気持ちにもなりますよね。

フジイさんご自身も誰かに受け入れてもらえるかどうか、というテーマを常に持ちながら生きてきたことが話を聞く姿勢に表れているのかもしれませんね。

苦しいものを乗り越えた先に待っている関係は、より強いものになると思います。
神主は、お参りする人と同じ目線に立ってお話を聞くという立場。教師という職業も同じですね。もしかしたら根底で繋がっているのかもしれません。

教育のシーンでカミングアウトを受け入れてもらえると、かなり楽になる子供たちが増えるんだろうなと思います。

やっぱり知るということが大事ですよね。色んなマイノリティがあるけど、ただ少数なだけで何の問題もないということを子どもたちにも早い段階で知ってほしいし、そういう考え方を学んでほしいなと思います。
知ることによって、どう対処したらいいか、どう話したらいいか、子どもたちもお手伝いできることがあると思います。受け入れる素養があるのに、知らないことで動けないのは残念ですからね。

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